霧島ジオパークについて

火山を感じ、考える場所

霧島ジオパークは九州南部の宮崎県と鹿児島県にまたがる地域にあり、ジオパークエリアの中央にそびえる霧島山は現在も活動を続ける活火山です。霧島山は20を超える火山が折り重なってできており、各々の火山は山体に対して大きな火口を持ち、その中には豊かな水をたくわえているものもあります。他にも溶岩流や火砕丘、山体崩壊に伴う流れ山など、多様な火山地形が見られることは霧島山の大きな特徴です。 また、エリア北方には霧島山の誕生に先立つ加久藤カルデラや小林カルデラがあり、エリア南方は姶良カルデラの縁に接しています。こういった現代人が経験していない巨大噴火に伴う陥没地形やその周辺の広大なシラス台地(火砕流台地)も同様にこの地域を特徴付けています。 このような火山地形と間近で対峙し「火山とは何か」を考える上で、霧島ジオパークは最も適した場所だと言えるでしょう。

火山が育む豊かな環境、植生

火山活動は地形だけでなく、様々な環境や生態系をもたらしてきました。そこには火口湖や渓谷、干潟、湿原などの多様な水環境が分布し、その最大1,700mに及ぶ標高差に伴う植生の垂直分布も相まって、豊かな生物相を育むフィールドとなっています。また、霧島山の各火山の植生は噴火の影響を最後に受けてから経過した時間がそれぞれ異なるため、植生遷移の様々な段階を私たちに見せてくれます。最近も大きな噴火を繰り返してきた新燃岳周辺では植生がほぼリセットされ、その後の環境の変化が新たな見どころになっています。
環境や植生の多様性に加え、今まさに移り変わっていく自然を実感できるのは霧島ジオパークの大きな魅力です。

火山と私たちの暮らし・文化とのつながり

火山はその麓に生きる私たちの暮らしや文化にも深いつながりがあります。例えば、山麓に見られる豊かな湧水や、マグマからの地熱エネルギー、温泉などの火山からの直接的な恵みのほか、芋焼酎やお茶、黒酢などの食文化にも火山の地形や地質の影響が見られます。また、石橋や石蔵などに代表される火山の石文化や、火山に関連する神話や祭事など、麓の文化と火山を切り離して語ることはできません。火山は災害をもたらす一方で多くの恵みも私たちにもたらしています。
このような火山に対する畏敬の念は、火山の周囲に分布する神社や様々な民間信仰という形で各地に残っています。

火山とこれからの私たち

近年も大小の噴火を繰り返し、複数の火口で同時に活動を続ける霧島山と私たちはどうやって向き合っていけばよいのでしょうか。低頻度ながら今後も発生するであろう周囲の文明を一瞬にして滅ぼすカルデラ噴火をどのようにとらえるべきなのでしょうか。私たちは地球から試されていると言えるでしょう。
古代から続く火山との向き合い方にどんな新しいページを加えていくかは今を生きる私たち次第です。それを世界の火山地域と共有し学びあって活かしていくことが、持続可能な地球社会の構築のために霧島ジオパークに課せられた大きな使命なのではないでしょうか。

霧島ジオパークが目指す姿

目指す姿を実現するための6つの取り組み方針

(1)地域資源を守り活かします
(2)地域資源を活用し、活躍する「人」を育みます
(3)未来を生き抜く知恵を身につけます
(4)地域資源を活用しやすい環境を整備します
(5)霧島ジオパークの活動を持続可能とする運営基盤を整備します
(6)他地域等とのネットワークを活用し、相互に向上を図ります

ジオパークとは

ジオパークは、「地球遺産をたたえ、持続可能な地域社会をつくろう」を基本理念とし、地球の歴史の一端を説明するような地形・地質の遺産や景観が、「保護」、「教育」、「持続可能な開発」のそれぞれの要素が互いに関連しあった考え方の下で管理された、ひとつのまとまった地域のことです。
ジオパークでは、地球の資源を持続的に利用したり、気候変動の影響を緩和したり、自然災害の影響を軽減するといった、社会が直面している重要課題への意識と理解を高めるため、地域に存在する岩石や地層といった地質遺産を、あらゆる自然・文化遺産と関連させて利用しています。また、それらの遺産の重要性について地域住民の意識を高め、地域に対する誇りや愛着を持ってもらうことを目指しています。
地域の遺産が保護されている一方で、「ジオツーリズム」と呼ばれる地球遺産を活用した観光が推奨されており、それを通じて新たな収入源が生まれ、革新的な地元企業や新しい雇用などが活発に作り出されます。

ジオパークについての詳細は日本ジオパークネットワークHPをご参照ください。